国の顔でも東京都の顔でもなく、私は島民の顔を見ている。

この島の人たちは、自分のことだけじゃなく、
お互いに周りの人のことも考えて
生きている人が多いと思います。
都会と比べて確かに不便ではあるけれど、
人が生きていく上で大切なものが、この御蔵島にはある。
村役場の仕事は華やかな事ばかりではありません。
その中の一つが、島唯一の医療機関である村営診療所の
管理運営。光熱水費の支払いや医療消耗品の購入、
東京都から派遣される医師の住宅の手配など、
すべて私の仕事です。
この診療所がきちんと管理運営されていなければ、
体調を崩しがちな、あのおばあちゃんが困る。
熱を出しやすい子どもを育てている、あのお母さんが困る。
いつも仕事をしながら、島民の顔が思い浮かぶんです。
私は病気を診ることはできないけれど、
島民の顔を見て仕事をしています。

島であろうが、都会であろうが、結局のところ、
どこに行っても誰かのために働かなければなりません。
だとしたら、顔が見える誰かのために働くほうが
幸せだと思うんです。この前、一緒にBBQをしたあの人。
この島でずっと暮らしているあの人。
移住してきたばかりで不安そうなあの人。
私がここにいる理由は、間違いなく島民のみなさんです。
移住して間もない頃は、本土に戻りたいと思ったことも
あるけれど、やっぱりこの人たちと離れたくない。
仕事のミスを島民の方にフォローしていただいたことも
ありました。私の力の源は、島民のみなさんです。
相手を大切にする気持ち。安心・安全な暮らし。
働きがいのある仕事。
都会で失われつつあるものが、
この島にはたくさんあると思います。

Profile

兵庫県出身。前職は菓子の販売職。
志望動機は特にないまま、御蔵島村役場に転職。
村役場職員として働くうちに、「自分が働く意味」を
この島で見つけ、現在10年目。