海が荒れて船が着かない時期は、
どうしても食材の調達に困ってしまうんですが、
私が御蔵荘(宿)の人間であることを
島のみなさんが知ってくれて、
道端で会うと声をかけてくれるんです。
「キュウリ足りてるか?なかったらやるぞ」と
宿まで持ってきてくれたり、
「今朝カツオが釣れたから後で持っていくわ!」と
お電話をもらったり。元は島の人間じゃない私にも、
温かく接していただいて、助けられながら暮らしています。
御蔵島に来る前は、都内のケーブルテレビ局の
営業職として働いていました。
新婚旅行で行った小笠原の父島でイルカにハマり、
もっとイルカと遊びたいと探して知ったのが御蔵島。
年5〜6回は遊びに来ていたかな。
5年くらいイルカに貢いで、もういっそ住んじゃえと
いうことで前任の御蔵荘支配人のご好意もあり、
住み込みで働くようになりました。
島の方とは、今は顔を見れば声をかけてもらえる関係ですが、
島に来た当初は全然話してくれなかったんです。
声をかけてもリアクションが薄いので、
「避けられてる?」と思ったことも。
ただ、待っていても仕方ないですし、
まずは顔を覚えてもらおうと島の社交場でもある
丸一商店さんに毎日通いました。
店主の弘子さん(通称みっちゃん)とも仲良くなり、
あとは紹介、紹介で。営業時代の経験が生きましたね(笑)。
1カ月もたてば話しかけてもらえることも増え、
「体が痛いんです」とボヤいたら、
柔道整復師の資格を持った島民の方を連れてきてくれて、
マッサージをしてくれたこともありました。
最近では、島外での経験を観光業に生かしてほしいと、
観光協会の理事に選んでいただきました。
まだまだ島のことは勉強中ですが、
お世話になっている島の方、大好きなイルカのためにも、
恩返ししたいです。
Profile
埼玉県出身。21年間、都内のケーブルテレビ局で営業職として従事。
同じ会社で働く奥さまと脱サラを決意し、島唯一のホテルタイプの宿、
村営「御蔵荘」のスタッフ(現在は支配人)として移住。
島民の会員投票で選ばれ、観光協会理事を務める。